評論 — 値札は語る
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By Nihongo PathUpdated
Strategy notes: read these before the passage
- Before answering, fix what 前者/後者 refer to: 前者 = 「コスト転嫁」, 後者 = 「品質向上に伴う改定」.
- The final paragraph pre-empts a misreading (企業が消費者を操っている) and states the real thesis after むしろ逆で. Read that sentence carefully.
- Examples (老舗菓子店) support the sentence just before them; ask what claim the example illustrates.
Passage
「原材料価格の高騰により、誠に不本意ながら」——値上げの告知文は、判で押したようにこの句で始まる。企業は値上げを、自らの意思ではなく外部から強いられた不可抗力として語る。興味深いのは、値下げの際にこの語法が決して使われないことである。値下げは「企業努力の成果」として、誇らしげに語られる。
価格とは本来、需要と供給の均衡点を示す中立的な数値であるはずだ。しかし現実の価格は、それを告げる言葉と切り離せない。同じ十パーセントの値上げでも、「コスト転嫁」と説明されるか、「品質向上に伴う改定」と説明されるかで、消費者の受け止め方はまるで異なる。前者は同情を、後者は疑念を招く。企業がこれを知り尽くしているからこそ、告知文の語彙は入念に選ばれる。
経済学の教科書は、こうした「語り」を分析の外に置いてきた。価格は数字であり、言葉は雑音だと。だが、消費者が反応しているのは数字だけではない。値上げを「裏切り」と感じるか「やむを得ない」と感じるかは、その企業がそれまで積み上げてきた信頼と、告知の言葉遣いとに左右される。ある老舗菓子店が二十年ぶりの値上げを「これまで据え置いてきた理由」から語り起こして客に受け入れられたのは、その典型である。
私が言いたいのは、企業が言葉で消費者を操っているということではない。むしろ逆で、価格が純粋な数字であったことなど一度もない、ということだ。市場は計算の場である以前に、語りの場である。値札の数字を読むとき、私たちはつねに、その数字がどう語られたかを一緒に読んでいる。
Vocabulary in this passage
- 高騰こうとう
- sharp rise (in prices)
- 不本意ながらふほんいながら
- reluctantly
- 判で押したようにはんでおしたように
- as if stamped; identically
- 不可抗力ふかこうりょく
- force majeure
- 語法ごほう
- phrasing, usage
- 均衡点きんこうてん
- equilibrium point
- 転嫁てんか
- passing on (costs)
- 疑念ぎねん
- suspicion
- 入念ににゅうねんに
- carefully
- 雑音ざつおん
- noise
- 据え置くすえおく
- to leave unchanged
- 操るあやつる
- to manipulate
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