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道Nihongo Path

随筆 — 効率が奪うもの

Time limit 15 min

By Nihongo PathUpdated

Strategy notes: read these before the passage

  • Reflective essays alternate between abstract claims and a concrete episode. Note how the library story (paragraphs 3–4) is used to ground the definitional argument of paragraph 2.
  • The librarian's quoted words are the emotional and logical hinge. A 指示語 question is likely to ask what 'that something' (何か) refers to.
  • The final paragraph converts the argument into a rule (目的を語る = 何を守るために非効率を引き受けるか). Expect the 主張 question to be phrased in those terms.

Passage

「効率的に」という言葉を、私たちは一日に何度口にするだろう。会議は効率的に、移動は効率的に、学習も、育児も、休息すら効率的に。効率という価値は、いつの間にか、それ自体を疑うことが許されない位置にまで上りつめた。私はここで、効率に反対したいのではない。ただ、効率が何を「測っていないか」を、一度立ち止まって考えてみたいのである。

効率とは、投入に対する産出の比率である。定義上、それは目的が定まってはじめて意味を持つ。目的地が決まっていなければ、最短経路は存在しない。つまり効率は、目的を問う力を持たない。目的が正しいかどうかは、効率の外側で決められるべき問題であり、効率はそれについて何も語らない。ところが現実には、効率の追求が目的の吟味(ぎんみ)を押しのけ、「速く着ける場所」がいつのまにか「行くべき場所」になっている。

私がこのことを痛感したのは、ある地方の小さな図書館を訪ねたときだった。その図書館には、貸出(かしだし)の記録を残さないという古い方針があった。誰が何を借りたかを、返却された瞬間に消す。利用統計は取れず、蔵書(ぞうしょ)の選定にデータは使えず、効率の観点からは明らかに劣(おと)っている。司書(ししょ)に理由を尋ねると、彼女はこう答えた。「人が何を読んだかは、その人だけのものです。私たちが便利になるために、それを預かる権利はありません」。

私はしばらく言葉を失った。彼女が守っているのは、効率の目盛りには決して現れない何かだった。読書の自由、詮索(せんさく)されない権利、あるいは、自分が何者であるかを他人に定義されない余白(よはく)。それらは「産出」として数えられない。数えられないものは、効率の計算式の中では存在しないのと同じである。そしてこの図書館は、存在しないとされるものを守るために、意図的に非効率を選んでいた。

帰りの電車で、私は自分の仕事を思い返した。私はどれほど多くのものを、「数えられない」という理由だけで切り捨ててきただろう。会議で発言しない人の沈黙。手間のかかる客との長い雑談。一見無駄に見える回り道。それらを削るたびに、確かに何かが速くなった。しかし、速くなったその先に、私は本当に行きたかったのだろうか。

効率を語る人は、しばしば「余裕ができれば、大事なことに時間を使える」と言う。だが私の経験では、削って生まれた時間は、たいてい次の削減の対象になる。効率は自らを目的化する性質を持つ。それを止められるのは、効率とは別の原理——たとえば、あの司書の言う「権利」のような、譲(ゆず)れないものの存在——だけである。

効率は道具であり、道具は主人を選ばない。速く行くために使えば速く行けるし、間違った場所へ行くために使えば、そこへ速く着く。だからこそ、効率を語る前に、私たちは目的を語らなければならない。そして目的を語るとは、何を守るために非効率を引き受けるかを決めることに、ほかならないのである。

Vocabulary in this passage

上りつめるのぼりつめる
to climb to the top
投入とうにゅう
input
産出さんしゅつ
output
吟味ぎんみ
careful examination
押しのけるおしのける
to push aside
痛感するつうかんする
to feel keenly
蔵書ぞうしょ
library collection
司書ししょ
librarian
詮索するせんさくする
to pry into
余白よはく
margin, blank space
目的化するもくてきかする
to become an end in itself
〜にほかならないにほかならない
is nothing other than

Questions

Ready

15:00

of 15:00

Question 1

Choose the best answer

筆者によると、効率が「目的を問う力を持たない」のはなぜか。

Question 2

Choose the best answer

「速く着ける場所」がいつのまにか「行くべき場所」になっているとはどういうことか。

Question 3

Choose the best answer

図書館が貸出記録を残さないのはなぜか。

Question 4

Choose the best answer

「削って生まれた時間は、たいてい次の削減の対象になる」から、筆者は効率のどのような性質を導いているか。

Question 5

Choose the best answer

筆者の主張として最も適切なものはどれか。

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